ASUKAの日記

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【映画の感想】『ラブレス』/2017/ロシア/ミステリ

■このブログは、映画作品を批判するものではなく、
優れていることを前提に、
「自分ならこうする!」「こういう展開もアリなのでは?」と
考えていくものです

『ラブレス』/2017/ロシア/ミステリ

loveless-movie.jp

あらすじ
仲が悪く離婚も成立している夫婦。
2人とも一人息子(12)の世話はほとんどせず、再婚予定の相手と寝てばかり。
そんななか、離婚目前で息子が失踪。
大量のボランティアを投入した創作活動も実らず、結局息子は死んで見つかる(事故死)。泣いて悲しむ夫婦。
それから数年後、夫は新妻との間の子を相手にせず、
妻は新夫と会話のない生活を送っているのでした。

youtu.be


「仲の悪い夫婦の子供が失踪した話」――。
よくありそうな話ですが、この作品のポイントは、
息子が失踪しても夫婦仲は改善されず(むしろ悪くなっていく)、
更に息子が死んでもなお、2人ともそこから何も学ばいないところ。

 

コレはコレでありなのですが、子供の失踪から夫婦が何かを学びなおす展開もアリなはず。
僕はハッピーエンドとか、ハッピーエンドでないにしてもある出来事から教訓を得るみたいな展開が好きなのです。

とはいえ、何か特別な展開がなければ、夫婦が成長することはあり得ません。
子供が失踪しても、妻は次の夫とベッドでグダグダ。夫は捜索現場でボランティアに色々任せきり。

 

ダメな大人に対して大人が何か言っても効果はなさそう。
劇中ではありませんでしたが、
ボランティアの方々や息子の学校の先生が夫婦に説教をしても、
妻は「うっせえよ!」と叫ぶばかり、夫は曖昧な態度をするだけだったはず。
夫婦にとって今現在一番親密なのはそれぞれの再婚予定の相手ですが、
彼らの信頼関係は極めて薄い。
再婚予定だろうと何だろうと、自分にとって耳の痛いことを言われたら、その時点でキレて破局のはずです。

 

一方、子供ならいいのかといえば、それも難しい気がします。
劇中に出てくる息子以外の唯一の子供(エキストラ除く)が息子の友達でしたが、
あの夫婦が彼の言うことを聞くとは思いません。

 

では、何をすれば夫婦が少しはマシになるのでしょうか。
個人的に思いついた唯一の展開が、「息子が戻ってきてしまう」というもの。
劇中では作品のラスト10分ほどで死んだ息子が発見され、
夫婦がそれぞれ涙を流しますが、それをもう少し早めてみましょう。
以下、「僕ならこうする!」の案です。

 

残り30分:息子と思われるの死体が発見され、
「実は息子を会いしていた」と号泣する夫婦(ココは実際の作品と同じ)
残り20分:離婚当日。息子のことなど忘れ、新しいパートナーとの生活を開始する夫婦。
そこに警察あたり(誰でもいいです)から電話。息子は実は生きているかもしれないとのこと
残り15分:実は生きていた息子と対面する夫婦。息子は誘拐されていた模様。
息子がいない生活のスタートに安堵感を覚えていた夫婦は困惑。
夫も妻も「一緒にと暮らそう」とは言えず、お互いに「愛してるんじゃなかったのか」と息子を押し付け合う。
自分そっちのけで言い争う両親の姿に息子は号泣。
初めて感情を露わにする息子を前に言葉を失う夫婦。
結局、息子は児童養護施設のようなところ(ロシアにあるのだろうか)に預けられる
残り10分:数年後。息子に会いたいと児童養護施設に電話を入れる夫と妻だが、同施設は面会を拒否。
お互いに不満を見せるが、その分、自身の新しい子供や家族に対し、それなりに優しい態度を見せる

 

どうでしょう。少しばかりは救いが見える話になったかな……。
離婚した元夫婦もこの世のどこかで息子が生きていると分かっていれば、
多少は彼に恥じない生き方をしようと思うのではないでしょうか
(あの夫婦に限って、それはあり得ないかもしれませんが……)。

 

不条理ものも物語の一つだし、
非情なお話という点で、ラブレスの脚本に穴はありませんでした。
ただ、物語序盤で提示された問題(=息子を夫婦どちらが引き取るか)については、
「息子が世の中からいなくなる」という、
夫婦にとっては一番辛いようで、実は一番楽な結末に行きついてしまいました。
これ以上、息子と向き合わなくていいわけですから。
僕個人としては、自分にとって厄介な他者がいる中で行動・成長していく主人公を創っていきたいところです。